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リーダーの「人間力」とマネジメントの「しくみ」で組織力を向上します

生産性マネジャーの働き方改革

働き方改革

ホワイトカラーの「生産性向上」

日本のブルーカラーの生産性は世界随一であるのに対し、ホワイトカラーの生産性は先進国の中で最悪レベルと言われています。
「働き方改革」の課題である「労働生産性の向上」「長時間労働の是正」をホワイトカラーに焦点を当てて提案します。

ホワイトカラーは頭を使って生産する仕事です。長時間労働の是正にもつながる「生産性の向上」とは、今より高い「質」のサービスを「短時間」で、より「多く」の顧客に提供すること。これを頭を効率的に使うことで実現することが命題です。

生産性向上へのアプローチ方法を議論する前に、バブル崩壊後の不況を経験した、現場のマネジメントの現状を確認します。

景気後退後の現場マネジメントの苦境

バブル崩壊後、上司は忙しくなりました。部下が辞めても補充はありません。非正規雇用等の部下の多様化によって、マネジメントは複雑化。人材不足を埋めるために自らも現場に立つ必要性に迫られた人も少なくありません。上からは、経費節減の通達や業績不振の報告の要請が増え、部下の仕事に対するチェック業務が増加。”チェック”と”報告”という非生産的な活動は、単に時間を圧迫しただけではありません。部下との間に”不信”という溝を作り、”隠す” ”受け身” ”消極”で組織風土は悪化し、上司は孤立し始めました。

上司が孤立し自分の仕事で忙しくなるにつれ、現場の活動は部下任せになります。部下の成長に役立つナレッジもまわらなくなりました。教育費も長期に渡り削減されたため、”出来る人”と”出来ない人”の格差が拡大しました。

部下のプロセスや課題が見えなくなった上司が、唯一短時間で収集できる情報は”結果”。結果に対して”詰める”マネジメントが増加したのも無理はありません。”命令”は、短期的には効果をあげるかもしれません。しかし、”対立”の構造は人間関係を悪化させ、長期的には成果のでないバッドサイクルがまわり始めました。

縮小マーケットに入り、顧客が悩み始めた頃には、上司はすっかり顧客ニーズがわからなくなりました。以前のような統計数字では、もはや他社を差別化できるマーケット戦略は立てられません。いま必要なのは、メンバーが直接、顧客との対話から得られる生の情報です。

今の「現場マネジメント」が次のステージに向かうためには、次のような苦境を克服する必要があります。

  • 上司は自分の仕事で忙しく、部下達から孤立
  • 部下のレベルはバラバラで、”出来る人”と”出来ない人”の格差が大
  • 部下のプロセスと課題が見えないので、結果マネジメントしかできない
  • ”不信” ”命令”を起点とした人間関係のバッドサイクルがまわっている
  • マーケット戦略立案に必要な、生の顧客情報が入らない

 

顧客が悩むことで「生産性向上」の難易度は高まった

”物が売れない時代”に入ってから、顧客に求められるサービスレベルは、”物が売れていた時代”のそれとは変わりました。今は顧客自身でも自分の業界の行く末が読めなくなりました。商品を買うにも、それが自社の課題を解決するのか見極められず、選択に悩んでいます。

現場の最前線にいる顧客対応者に求められることは、もはや単に商品を売ることではありません。顧客に業界の知見を提供し、ビジョンを聞き、課題を把握し、それを解決する商品提案が求められています。

「生産性の向上」には、今より高い「質」のサービスを「短時間」で、より「多く」の顧客に提供することが必要ですが、

  • 悩んでいる顧客への提案は、課題解決という新しい「質」が求められる
  • 1つの商品を売るのに、今まで以上に「時間がかかる」
  • 顧客の状況がわからなくなり、より「多く」のターゲット顧客がどこにいるのかわからない

バブル崩壊以前と比べると、「生産性向上」を実現する難易度は各段に高くなりました。

ホワイトカラーの「生産性向上」に向けたアプローチ

生産性向上に向けた改革の中心人物は誰か?

ホワイトカラーは頭を使って生産する仕事です。頭を効率的に使うことで生産性の向上を実現します。頭を効率的に使うアイデアとは、例えば以下のようなものです。

  1. 意味のあるプロセスに意識を集中させる
  2. 「実力+α」の目標達成イメージを具体化し、無意識的を働かせる
  3. 達成に必要なリソースを明確にし、実行可能な計画に落としこむ
  4. 効率的な思考の枠組を使う(ex.問題フォーカスからゴールフォーカスに変更)
  5. 対話や質問し合う風土・機会を作り、「気付き」を得る
  6. よい人間関係を作ることで、思考の質を向上させる

 

1.は、PDCAのプロセス設計で解決すること。2.と3.は、期初の目標設定面談で実現すること。4.と5.と6.は、面談、会議、同行など、部下育成全般に共通する「対話力」の向上によって実現します。

これらの「生産性向上」に向けた働き方改革ができる人物は、レベルがバラバラな現場の部下でも、現場から遠いトップマネジメントでもありません。現場で課題を把握し、工夫し、解決する、自律的にPDCAをまわし、部下育成の役割を持つ、「現場マネジメント」こそが「生産性向上」の鍵を握る中心人物です。

現場マネジメントによる「生産性向上」はどこから手をつけるのか?

1つは、「結果」マネジメントから「プロセス」マネジメントに転換することです。結果は短時間で知ることができましたが、プロセスは膨大なので、意識を向ける対象を絞る必要があります。部下が成長し、サービスの質が向上するプロセスを絞り込んで、具体化し、PDCAプロセスを設計し直すことが、最初のステップです。
PDCA設計のポイントは、[PDCAマネジメント」を参照ください。

もう1つ、並行して取り組むべきは人間関係の向上です。”消極的” ”受動的”なままでは、新しいPDCAを現場でまわすことはできません。
現場マネジメントが主体となって組織の人間関係にグッドサイクルをまわす方法をご提案します。
詳しくは「相手のタイプに合わせて効果的に振舞う人間関係術」を参照ください。

PDCAプロセスを設計した。組織戦略も発表した。しかし、それだけでは、生産性向上につながるPDCAはまわりません。次にPDCAを現場マネジメントが実際に回すためのポイントを4つお伝えします。

1.最初の一歩は、戦略を部下の目標と行動に接続すること

組織戦略を実現するのは現場のメンバーです。組織戦略は、部下に分割し、部下の目標と行動に接続して、初めて実行へと動き出します。
しかも、今実現したいのは質の向上。単に規模を追及しても生産性は上がりません。質を向上するためには、評価しやすい定量目標ではなく、定性目標で質を設定します。
部下が目標達成したゴール状態を一緒にイメージしましょう。人はイメージできないことは実現できません。ゴールに到達するために必要なリソースを明確にし、プロセスを計画することで、高い目標を達成できる確率があがります。
定性目標の設定については、「面談道」を参照ください。

2.「計画」を実現するために暗黙知を交換する

目標に向かって実際に行動できるようになるためには、言葉で説明する「形式知」だけでは不十分です。”やってみせてやらせてみる”といった「暗黙知」を交換する必要があります。
同じ情報をインプットしても部下のアウトプットはバラバラ。ブラックボックスになっているプロセスを垣間見れる唯一の方法が、同行やOJTです。
暗黙知を交換するポイントについては、「同行/OJT道」を参照ください。

3.計画と実行のギャップを客観的に把握する

1.で計画した重要プロセスを2.で実際に実行し、そのギャップを客観的に数値で把握します。自分が実行できているという感覚と実際にできていることは違います。どの部分がどのぐらい違うのかを知ることによって、行動を修正することが可能になります。測ることによって行動は磨かれます。

プロセスのギャップを同じ組織のメンバー間で比較すると、人によって業務スタイルが違うこと、しかも継続的に同じ傾向があることに気が付きます。例えば、同じ商品を売る営業マンでも、訪問回数の多い人と少ない人。新規への訪問が多い人と少ない人。同じプロセスのメンバー間の違いに着目すると、何がその違いを生んでいるのかを議論することによって、メンバー間のナレッジを引き出すきっかけになります。結果の違いではなく、プロセスの違いの中にこそ、すぐに真似できるナレッジが隠れています。

4.対話と質問によって気づきとアイデアを出す

いまの部下の課題は、標準的な行動レベルがバラバラなこと。標準的な行動のナレッジを教えられるのは、賞を取るような優秀なメンバーでも上司でもありません。それは、同じ組織にいる隣のメンバーです。標準的な行動のナレッジはやっている当人は、それがナレッジだとは気が付きません。会議で議論し、質問されて、アイデアが出ることによって、はじめてそれは明日からすぐに使えるナレッジになります。
明日の行動につながる議論のやり方については、「会議道」を参照ください。

 

ホワイトカラーの生産性向上が人生をゆたかにする

生産性が向上すれば、長時間労働が解消し、自由な時間が増えます。しかも、それはメンバー自身が「頭を効率的に使う」ことによる「成長」によって実現します。

業務の成功にとって重要なプロセスを絞込み、全員の意識を集中させられる組織は、若手であっても行動を素早く磨くことができます。メンバーの育成力が高く、変化にも柔軟です。

よい人間関係は、思考を柔軟にし、積極的に行動できるので、無理せず成果がでます。対話や質問が自由に交わされる組織風土には「気付き」が溢れ、一緒に困難に立ち向かえる「仲間」がいます。

実力+αの目標のイメージを具体化して実行まで接続する。効率的な思考の枠組を使うようになると、仕事、プライベートを問わず、成果がでるようになります。自己肯定感が高まり、理想の自分に近づきます。